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Twitterより。

ええっと……何日前だ? 



一ヵ月半……くらい経ってしまっていますが、RT頂いた上記のツイートがありますので書き書きしてみました。
気になる方は続きを読むからどうぞ!





*******

『そんな自分が嫌いだった』

 手を伸ばす。届かない、届かない。
 いやだ、と叫んだ。一緒にいたいの、どうして離れるの。いやだよ、一緒にいたいよ、どうして離れるの。答えてくれた声があった。
 精一杯手を伸ばした。精一杯手を伸ばし返してくれた。それでも手は繋げなかった。指先すら触れ合えなかった。
 手を繋いで、すぐ隣で、弾む声で幸せを歌い合った声が、悲痛にまみれた叫びを紡ぐ。
 どうしてもう一緒にいられないの?!

 はた、とメイコは目を覚ました。毛布を跳ね除けて天井に伸ばされた手が空をつかんでいる。気がついた瞬間力が抜けて腕が落ちてきた。全身に鳥肌が立っているのがわかる。
 耳が気持ち悪くて身じろげば、頬を雫が伝っていった。仰向けに寝たまま涙をこぼしていたらしい。それが頬から耳へと滑り落ちたのだろう。耳の中に入らなくて良かった、とそんなことを思う。歌い手である以上聴覚は大切にしなければならない。
 ぞわぞわする感覚が拭えないままに濡れた頬を擦った。それでも涙は次から次へと溢れ出す。何とかして止めないと、と思いながらも術が思いつかず、ただひたすらに手を動かしていると。
「……メイコ?」
 呼ばれてぴたりと涙が止まった。隣で寝ていたカイトがメイコのほうに寝返りを打つ。顔を隠す暇もない。
 暗がりの中だというのにカイトには見えたらしい。メイコが背を向けてしまう前に、カイトの手がメイコの肩をつかんで自分に向き直らせた。
「何泣いてんの」
 頬に手を添えられて親指で優しく目元を拭われる。メイコはそんなカイトの手の感触に甘えながら、ふと眉根を寄せた。
「……なんで私泣いてるの?」
「それを訊いてるの僕なんだけど」
「……なんで、だろ」
「嫌な夢でも見た?」
 夢? メイコの思考は反射的にそれに否を返す。夢ではない。夢などではない。見ていた情景をはっきりと思い出す。
 自分と相手しか居ないのに自分だけを見ていて欲しくて相手を自分だけで構築してしまいたくて。醜いほどの純粋さで思っていたあの頃の記憶。
 自分自身を捨てても良いと思っていた、そんな自分が嫌いだった。
 だから、涙を拭ってくれる手の持ち主には言いたくなくて、メイコは崩れた笑顔を見せる。
「……そう、かも」
「まあ、夢なんて忘れるものだからね」
 涙を拭ってしまってから、カイトはメイコの頬を軽くつまんだ。
「悪夢からは覚めた?」
「うん」
「なら良し」
 メイコから手を離したカイトが仰向けに寝転び直す。メイコは少しだけ迷ってから、カイトの腕をそっと抱え込んだ。ため息がひとつ響くものの腕は引き抜かれたりはしない。
 カイトの腕を抱き枕にしてメイコはそっと目を閉じる。おやすみ、今度は良い夢を。溶け消えてしまいそうな優しい声がメイコの不安を和らげた。



 手を伸ばす。届かない、届かない。
 いやだ、と聞こえた。一緒にいたいの、どうして離れるの。いやだよ、一緒にいたいよ、どうして離れるの。必死で答えるしか出来なかった。
 精一杯手を伸ばしてくれた。精一杯手を伸ばし返した。それでも手は繋げなかった。指先すら触れ合えなかった。
 手を繋いで、すぐ隣で、弾む声で幸せを歌い合った声が、悲痛にまみれた叫びを紡ぐ。
 どうしてもう一緒にいられないの?!

 懐かしくも息苦しい夢に叩き起こされて、起きてみれば暗闇の中のメイコの泣き顔が待っていて。
 拭った涙の冷たさと、腕にしがみつく温もりが、カイトの眠気を完全に追い払ってしまった。
 今はすぐ傍にいるのに。いや、すぐ傍にいるからこそ。
 まだ口に出せない思いが燻っている。

 お互いしか居なくてお互いだけが居れば良くて。自分だけを見てくれるようにすがって甘えて手を引いていた。
 せっかく「ふたり」で居たはずなのに、離れなくて済むように、失わなくて済むように、いっそ「ひとつ」になれたらと思い続けていた。
 閉ざされた甘い箱庭。小さな世界で小さく小さく満ち足りていた。
 そんな自分が嫌いだったと言えるまで。
「おやすみ」
 あえて優しくメイコの寝顔と自身の奥底に向けて呟く。
「おやすみ」
 広がる世界に怯えて竦んでしまわないように。
「今度は、良い夢を」
 引き離されて、「ふたり」になって、出会えて良かったと言えるように。
 間近にあるメイコの髪を少しだけ食んでから、眠れないことを承知の上で、カイトはゆっくりと瞳を閉じた。
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[ 2012/08/12 02:16 ] ボカロ小話 | TB(0) | CM(2)

あぁ、いいです…!なんて素敵な年長組…
プロト→ 製品にひそむ彼らの感情の渦たるや
私には何年かかっても書き表せないと思います。
その一端を、こんなに切なく静かな文章でにこめられる
西の風さんのお話が大好きです。
ベッドの中じゃちょっとお兄さんなカイト萌え…!萌えぇえええ!!!!

ありがとうございました!!
[ 2012/08/12 23:50 ] [ 編集 ]

Re: コメントありがとうございますー!

>ねこかんさん
いらっしゃいませ並びにコメントありがとうございます!
お互い覚えているけれども口にしないパターンもありかなあと思った瞬間こうなりました。
だ、だいすきとまで仰っていただけてむしろそわそわしてしまいますありがとうございます。
自分が甘えたいからこそ甘えられた時に受け止められるようなそんなカイトで居て欲しい、とか思ってますw

萌えていただき嬉しい限りです! こちらこそありがとうございました!
[ 2012/08/14 01:01 ] [ 編集 ]

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