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書き書き書き。

いや、うん、えーっと。
きっかけはTwitterでした。

お世話になっておりますあおいさん(@aoi1ii2oia)が素敵な画を上げてくださっていたのです。
SS書いてみませんかというお言葉と共に。

拝見してうにうに考えている内に出た結論。140文字に収まらない。
ということでブログのほうに書き留めることにいたしました。

あおいさんに掲載許可を頂いた、お話の発端となりました画像と共に続きに収めておきます。
あおいさんに改めて感謝しつつ。


*******

『涙と笑顔を』

「こーんなところにいたのね」
 快活な声に背中から呼びかけられてカイトは思わず顔を伏せ身を縮めていた。柵も何もない屋根の上。白み始めた空の下、メイコは危なげなくカイトの隣に歩み寄る。
「部屋に居ないから家出でもしたのかと思ったわ」
 当たり前のように隣に座られて、カイトは少しだけメイコと距離を置く。今は誰とも会いたくなくて、誰も来ないであろう危険な場所を選んだのに。メイコもカイトの置いた距離をそれ以上つめることはなく、笑って空を見上げるにとどめた。
 カイトの姿が部屋にないのを見て、顔面蒼白で家中を探し回り、外に駆け出して屋根の上に姿を見つけて安堵したことなど、メイコはおくびにも出さない。日付が変わる頃、まさに真夜中からどうしても寝付けず、屋根の上で月と星を眺めて夜を明かしたことなど、カイトは語ろうともしない。
「空、綺麗ね」
 うつむいていたカイトがメイコの言葉につられて顔を上げる。白に近い空の色は休んでいないカイトの目には痛い。片手を投げ出し、もう片手で目の上にひさしを作る。それでも言葉は出ない。
 投げ出されたカイトの手に、メイコの手が乗せられた。慌てて引っ込めようとする前にメイコが強く握ってくる。
「朝が来たの」
 カイトは小さく頷いて、改めてうつむいた。もう思い出したくもない。傷つけられる言葉など浴びるほどに受けてきた。また改めて傷ついている暇などない。それでも。
 己の弱さに、無力感に、たまらなくなることがある。
 カイトの顔が歪む。悔しそうに、歯痒そうに。つられてカイトの手に力がこもる。それを受けて、メイコは困ったように笑いながら、カイトの正面に身体を移した。
 表情を見られまいとするカイトをメイコが覗き込む。身体をひねって逃げようとするカイトの首に両腕を投げかけた。
「そんな顔してないで、泣いて良いのよ」
 言葉を紡げば堰が切れる。そんな気がしてカイトは無言を貫く。メイコだってつらかったはずなのに、メイコに気遣わせていることがまた、カイトにはたまらない。

 必要なのは身体だけだと。声などなくても構わないと。
 歌えなくなっても数少ない「オトナのカラダ」があれば良いと。
 揶揄する以外の意図を見出せないほどの笑い含みの口調がまざまざと蘇る。

「カイトにそんな顔で我慢されるほうが、私、つらいわ」
 ごめん、と出かけた言葉はカイトの喉の奥で嗚咽と共につっかえた。
 メイコがカイトの襟足をいじり始める。その崩れない笑みを見られないまま、カイトは時折首に触れる指の感触を味わっていた。
 ささやかに触れ合うことしばし。落ち着いてきたカイトが顔を上げようとした瞬間。
「今は、カイトひとりじゃないでしょう?」
 穏やかに告げられた事実がカイトの堰を叩き壊した。内包する意味合いは温かくて切ない。
「ちが……っ」
 濡れた頬を隠す暇もない。否定の言葉を紡ごうとするも、今度は涙が喉を封じ込める。メイコの笑みが深まった。
 もどかしそうに唇を動かしているカイトの額に、こつりとメイコの額が当てられる。
「違わない」
 笑顔に似合う柔らかい声がカイトの涙を更に誘う。
「私の分も泣いてもらってごめんね」
 カイトが小さく目を見開いた。零れ落ちる雫は尽きそうにない。メイコに額を軽く擦り付けられて視線を落としたカイトを、重ねて湧き上がった悔しさが焼く。
 先頭に立つことを誇っているメイコは、泣いて視界を曇らせ足を止めかねないようなことを自分に許してやれないのだろう。そんな彼女のためにカイトが出来ること。元より片手で数え切れるほどしかないその中に、今の状況が含まれている。
「ねえ、カイト。嬉しいって言ったら、あなた、怒る?」
 メイコからすればカイトの涙は尊くも愛おしい。泣きたい時に泣くことを忘れた自身は、感情を片端から摘み取っているのではないかと不安になることもあるからだ。カイトが露にしてくれる感情に触れるたびに、まだ大丈夫だと思うことが出来る。
「ひとりじゃないの。大丈夫なの。怒っても良いわ。あなたが泣いてくれることが、私は嬉しいの」
 メイコが軽くカイトを引き寄せる。反応して強張るカイトに優しく優しく告げる。
「泣いてくれてありがとう、カイト。だからせめて、私から泣き顔を隠したりしないで」
 お願いだから。メイコに笑顔のままでそう呟かれて、カイトは捧げるように涙をこぼし続けた。


大丈夫大丈夫
絵:あおいさん
(預かり物ですので、絵の持ち帰りはご遠慮くださいますようお願い申し上げます)
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[ 2012/04/12 14:22 ] ボカロ小話 | TB(0) | CM(0)

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